物忘れより困る「認知症」の症状3つ
【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第十一回
困った症状3つ
暴力、徘徊、弄便。
これが認知症患者の困った症状トップ3ではないかと思っている。
物忘れや記憶障害、判断力の低下などは、脳の神経細胞がやられた結果、本人の脳に起こる問題で、「中核症状」と呼ばれる。
これに対して、暴力を振るうとか暴言を吐く、徘徊するなど、まわりの人との関わりの中で起こるのが「周辺症状」。介護する側が苦労するのは、こちらのほうだ。(周辺症状を「BPSD」と呼ぶことも増えているが、横文字にした結果、かえって混乱を招いているように思うので、ここでは以前からの名称を使う)
例えば、弄便(ろうべん)と呼ばれる症状は、どの程度まで一般的に知られているのだろうか。
これは字の通り、便をもて遊ぶこと。わかりやすく言えば、自分の排泄したウンコをいじりまわしたり、なすりつけたり、食べたりする認知症の問題行動のひとつだ。かつて有吉佐和子さんのベストセラー『恍惚の人』には生々しい描写がされたが、この作品も今の若い人にはなかなか通じない。
ぼくも介護する前はかなり珍しい極端な例だと思っていた。幸い、父にこの症状はなかった。